ダージリン紅茶の淹れ方
最高級「ダージリン紅茶」の生産地、インド。長期インド駐在で、「ダージリン紅茶」を日々楽しみました。厳選された良質の「ダージリン紅茶」でさえ、正しい淹れ方ができないと旨さを引き出すことはできません。以下は、美味しい「ダージリン紅茶」淹れ方のルールです。
(1)良質の「ダージリン紅茶」はストレートで楽しむ
日本では「紅茶」にレモンが一般的であるがレモンはクエン酸であり、それは「紅茶」の水色(すいしょく)を失わせたり旨味となる「アロマ」と「フレーバー」を破壊する。良質の「ダージリン紅茶」はレモンやミルク、そして砂糖も入れず、ストレートでその旨味を楽しむ。「ダージリン紅茶」は紅茶の「シャンパーニュ」と呼ばれ、透明感ある淡い琥珀色(ファーストフラッシュ)・オレンジ色(セカンドフラッシュ)に「マスカット」フレーバーが感じ取れれば最高!
(2)新鮮で空気(酸素)を多く含んだ「軟水」の使用
「紅茶」の旨味となる「アロマ」と「フレーバー」を抽出するには「軟水」が適す。英国やインドの水は硬水で炭酸カルシウムの含有量が多く、これが紅茶の「タンニン」と反応して水色を濁らせ、旨味の抽出力も弱い。これが英国・インドでミルク・ティー主流である理由の一つ。日本の水道水は軟水で紅茶に最適。塩素臭、カビ臭がない汲み立ての水道水がよい。
(3)理想のお湯の温度は約95度C
紅茶の「アロマ」と「フレーバー」を抽出させるには、ガラス製ジャンピン・ポットの中で茶葉の「ジャンピング(茶葉がゆっくり浮き沈みする現象)」が起る条件を整える。それは、空気を多く含んだ沸騰直前(約95度C)のお湯。電気ポットのお湯ややかんの汲み置きの水は空気が抜けているので不適。ガラス製ポットは熱湯を注ぐ直前まで、別の熱湯で充分温めておく。
(4)ティー・スプーン軽く1杯(約2.5g)2杯分の「茶葉」に熱湯350CC
1合より最少でも3合位の御飯を炊く方が美味しいのと同様、紅茶もコップ1杯分を淹れても美味しさが引き出せない。最少量350CCは、大体紅茶カップ2杯分。「茶葉」と「熱湯量」は画一的ではないが、好みで微調整といったところ。茶葉はティー・スプーン軽く1杯約2.5g分2杯を温めておいたガラス製ポットに入れ、熱湯を注ぐ。
(5)蒸らし時間は3分
茶葉の大きさで蒸らし時間は異なる。「ダージリン紅茶」の茶葉サイズはオレンジ・ペコ(OP、1-1.5cm)で、ポットに熱湯を注いだ後3分蒸らす。因みに最も小さい茶葉サイズのファニングス(F)やダスト(D)はティー・バッグ等に利用され、1-2分程度の蒸らし時間。「ダージリン紅茶」を蒸らす時は、優雅に砂時計で時間を測るのも楽しい。
(6)蒸らし終わった紅茶は熱湯で温めておいた陶器製ティー・ポットかティー・カップに注ぐ
蒸らした紅茶は一度に全て陶器製ティー・ポットかティー・カップに注ぐ。必要あれば茶漉し(ティー・ストレーナー)を使用。紅茶の味の均質性を保つため、紅茶は注ぎきること。蒸らし終わったガラス製ポットから注がれる最後の一滴は、最も旨味を凝縮した「ゴールデン・ドロップ」と呼ばれ、主賓のカップに注ぐと最高の歓待を意味する。紅茶を注いだ陶器製ティー・ポットは、ティー・コージーで保温する。美味しさの秘訣は、紅茶が冷めない工夫。
上記のルールを守ると、美味しい「ダージリン紅茶」に巡り合える。熱々の紅茶を「ウェッジウッド」や「ロイヤル・コペンハーゲン」のご自慢ティー・カップに注ぎ、美味しいケーキやクッキーをお茶請けに楽しむと、気分も更に高まることでしょう。それは延命を感じる至福の時でもあります。インドの高級紅茶で、ひと時の「幸福」を味わって戴ければと・・・。
(インド紅茶専科「Mittal Tea Room」オーナー・井上清美)